“日本の非効率なカスタマーサポートをUIで変える”Nota株式会社 CEO 洛西 一周さん
今日は対談レポートをお送りします。
本日登場する方は、Nota株式会社 代表取締役CEOの洛西一周さん。Nota社はYJキャピタルでも出資させていただいている、カスタマーサポートを支援するプロダクトHelpfeelを提供しており、3月2日に資金調達の発表を行いました。
YJキャピタルでNota社の担当を務める、COOの都との対談記事となります。
インタビューを通して、資金調達の背景や今後の事業の展望などを対談で語っていただきました。徹底されたUI・UXへのこだわりをプロダクトに落とし込む企業像など、学ぶべきことが多く必見です。
日本のカスタマーサポートの非効率
都:改めて、今回は資金調達おめでとうございます。このインタビューで、プロダクトや今後の展望のことなど聞ければと思いますが、まずは御社のプロダクトや事業領域について教えてください。
洛西:今回の調達のきっかけとなったプロダクトがHelpfeelで、事業領域はカスタマーサポートSaaSです。
洛西:カスタマーサポートに関して改めて説明しますね。
最近のユーザーは問い合わせをする際にまずはスマホやPCで検索し、電話番号を見つけて架電します。
その時、電話が10、20分繋がらないということもよく起き、繋がった時点ではすでに顧客がストレスとを感じているということも珍しくありません。また、そのようなテンションの電話を受けた側も同じようにストレスが溜まります。結果として離職率の高い職場になってしまい誰も得しない状態になっています。
一方で、カスタマーサポートの市場は拡大していて、1兆円という巨大市場になっています。
これに我々の積み上げてきたソフトウェアや製品がにキレイにハマり、Helpfeelというプロダクトになりました。市場性とプロダクトが上手くマッチしたため、成長することができています。
都:なるほど。市場や抱えるペインが大きいというのは重要ですね。UI/UXなど、Helpfeelの特徴も詳しく教えてください。
洛西:文字を1文字入れるだけで、候補となるFAQページのタイトルが一覧表示されます。その後も入力中にリアルタイムで候補ページの一覧が更新されるので、ユーザーの抱える疑問に対してスピーディーにフィードバックすることが可能です。
都:従来のサービスではセンテンスを打ち込んでEnterを押しても何も返ってこないという経験をしたことがありますが、実際に文字を打ち込みながら結果が見られるのはいいですね。リアルタイムで候補ページが表示されるので、かなりスムーズに疑問を解決できますよね。
洛西:1文字入力するたびに、「いい方向に進んでいるよ。」「悪い方向に進んでいるよ。」と教えてくれます。全部入力してから「ダメでした」となるとガクッとなるので、それを無くそうとしました。
64%も問い合わせが減った!?NotaのUI・UX哲学
都:導入後、カスタマーサポートのコール数は何%程減っているんですか?
洛西:一番成果が出ているところで64%減ですね。特にコールセンターなどの現場では驚かれていまして「誰かウェブサイトから電話番号を削除しちゃったんじゃないの?」「おかしいぞ、今日から電話が鳴らないぞ!?」と(笑)
都:コール数が減るのもUXが要因ですよね。優れたUXでユーザーが使いやすいからコール数がしっかり減っているんですね。
僕は、商品に疑問点や問題を抱えたとき、できれば電話を掛けないで解決したいタイプです。自己解決できると便利だし、知らない人と話して説明を受けるプロセスは避けたいと、内心では多くの人が思っているのではないでしょうか。
この潜在的なニーズに対して、御社はHelpfeelというソリューションをバシッと提供していますよね。視野を広げてみれば、御社のサービスを提供するクライアントのUI・UXの改善にも繋がっているのではないでしょうか。B to Bでありながらも従来のコールセンターとは異なり、デザイン・UI・UXが重要だと言われているこのご時世にピッタリなプロダクトではないかと。
こうした、既存のFAQサイトのUI・UXをHelpfeelで改善するという点で、努力されていることはありますか?
洛西:それはまさに、弊社の一丁目一番地です。
元々のストーリーをお話しますと、弊社のCTO増井はiPhoneの日本語入力を作っていたんです。AppleがiPhoneを日本で展開する際に、日本語は絶対に避けて通れないということで、スティーブ・ジョブズが増井をスカウトして「これを作ってくれ」と。
結果的に日本語入力機能はスムーズに実装できて、iPhoneは日本に進出できました。当初「スマホにはキーボードが無いから絶対にダメだ」という意見が多かったのですが、ソフトウェアを改善したことにより今まで以上に速く入力、検索ができるようになりましたよね。
そういう意味では消費者に気に入られないとヒットすらしない、UXを良くしないと売れないというメンタリティをしっかり持っている会社だと思っています。
都:クライアントの先にあるコンシューマーまで気にしてプロダクトを作っているということですよね?
洛西:そうですね。元々はそれがスタートで、GyazoやScrapboxもそうですがUIが使いやすいからこそ流行したと思っています。
AIで人間の足りない部分を埋める
都:一方で、GyazoやScrapboxはコンシューマー向けからエンタープライズ向けと、一見関係性がみられませんが、この3つのプロダクトに共通点はありますか?
洛西:ありますね。「ユーザーが少しずつ歩いて辿り着けるということ」が発想の源になっています。人間が少しずつ処理をしていくと目的のものに辿り着けますが、その途中には「良い」や「悪い」といった道が迷路のようにいっぱいあります。それをAIが予測して提示し、人間が選び取るということを繰り返すことで、機械と人間が協調しながら、創造的な作業を効率よく進めることができます。こういう発想がプロダクトの哲学にはありますね。
都:いつも話している、AIで人間の足りない部分を埋めるという考えですよね。
洛西:
そうですね。わかりやすい立証としてはナレッジ共有があげられます。
たくさんのドキュメントを全て理解することは難しいですが、Scrapboxでは1つ1つリンクを辿っていくと理解できる。こういう「簡単なステップを踏むことで、難しいことが簡単になるのでは?」という発想はありました。
Scrapboxでナレッジ共有、Gyazoで見たものを瞬間的に送れるということをやっていて、これがカスタマーサポートにハマリましたね。分からなかったことがすぐに分かるだとか、検索できるとか、これまで培ってきたものがそのままHelpfeelになりました。
都:具体的に、どのようなところがHelpfeelに繋がったのかをイメージしやすく説明してもらえますか?
洛西:Scrapboxは情報を断片的にカードのようにして、ネットワークで関係を作ります。あるカードから入った人は、関連したカードを辿っていくと全体図が理解できると。
PayPayフリマで「大きい商品を送る」という回答ページに「ゆうパックを使ってください」と書かれていたら、ゆうパックってどんなものだろうと気になりますよね。これがリンクになっていて、押すとゆうパックの説明がされるといったイメージですね。
長いマニュアルを書くのではなく、1つ1つの答えを集めて繋ぎ合わせると理解ができるというのがScrapboxの発想です。これがHelpfeelのFAQフォーマットに最適でした。これと優れた検索を掛け合わせると何を聞いても目的のカードに辿り着くということができます。
Helpfeelは裏側のナレッジを作る基盤が重要で、ここにScrapboxを使っています。Helpfeelを導入したお客様はScrapboxも、Gyazoも使われるので、Notaのワークプレイスは全て入っていることになりますね。
都:なるほど。断片的な情報からいろいろな情報に結びつけて、最終的に意思決定していく辺りの設計は、人間の思考プロセスに沿っているんだなと感じました。
売上貢献するカスタマーサクセスツールに進化する
都:次のプロダクト展開はどのように考えていますか?
洛西:
いま拡販しているHelpfeelは、メインはカスタマーサポートという領域でやっていますが、ユーザーへの提案機能も強化しています。
例えば、くらしのマーケットさんで活用されていますが「(部屋が汚いから)掃除したい。」「結婚式をもりあげたい。」など人間の欲求をそのまま入力すると、「こんなサービスはどうですか?」と提案してくれます。
また、車メーカーさんにも同じものを提案できます。「家族が乗る車が欲しい」「デートに使える車が欲しい」「タイヤはいつ交換すればいいですか?」など、これまで車のディーラーの営業マンが行っていた知見をそのまま活かし、人間の欲求ベースで答えを提案してくれます。
これができれば、Helpfeelは問い合わせを減らすのみならず、売上に貢献できるのでカスタマーサクセスツールとして使えます。Helpfeelを経由して売上を上げる世界にしていきたいと思っています。
都:提案機能を強化していくとのことですが、カスタマーサポート自体を御社のプロダクトで提供することや、今後はカスタマーサポートの人を支援するプロダクトを展開していく予定などもありますか?
洛西:はい。ユーザーが解決するのではなく、カスタマーサポートの人たちが自分たちの知識を深め、どのように回答していくのかを支援するカスタマーサポートの人向けのソリューションを販売しています。
都:カスタマーサポートのための社内ナレッジベースを、御社の強みである検索性を基に作っていくということですね。
洛西:はい。おっしゃるとおりです。Helpfeel単体だと検索エンジンのようにみえますが、その裏側でナレッジデータベースシステムを持っていまして、そこも大きな強みです。
Helpfeelは拡大フェーズに入った
都:資金調達をしたことで組織やプロダクトなど、強化していきたいポイントはありますか?
洛西:これまではプロダクトの話をしてきましたが、資金調達の主な目的は組織強化です。Scrapbox、GyazoはB to CとセルフサーブのB to Bの混合領域ですが、Helpfeelは完全にB to Bに振り切っていて、法人のお客様のカスタマーサポート、カスタマーサクセスを改善していきます。
営業組織も去年辺りから強化してきました。昨年の1月は株主の紹介ベースでの受注が多かったですが、今では非常に多くのソースから商談機会を獲得しています。
最近は、インサイドセールスの専任チームを立ち上げまして、どんどん商談が取れるようになっています。このように、組織拡大を進めていって導入社数を増やしていきたいフェーズです。
都:営業専任のメンバーがいなかった中で、ゼロからこのような体制を作ったことはすごいですよね。1から10のステージで組織拡大の実行力を持ち、最先端の組織に進化していると思います。
洛西:今後は、長期的に効いてくる施策も打っていきたいと思っています。資金調達を行ったことで中長期の施策を打っていける余裕も生まれますし、元々やっていた施策でもあるので、これからさらに本腰を入れて取り組もうと思います。
セルフサービスセンターを作っていく
都:今後の展望をお聞かせください。
洛西:マーケ、営業、カスタマーサクセスなどHelpfeelの事業で必要な人材を獲得し、より大きな組織に成長させていきます。今まであったプロダクト開発力にマーケ、営業を強化することで、開発とビジネスの両輪を大きくしていきたいですね。
都:大きなゴールやパッション、夢などはありますか?
洛西:Helpfeelで実現したい世界観はFAQセンターならぬ、セルフサービスセンターを作ることです。コールセンターに電話をかけるのではなく、ユーザーが自己解決できる方が幸せだと思っているので、あらゆるサービスにHelpfeelを導入し、セルフサービスセンターの普及を実現していきたいです。
都:最後に2つ質問させてください。1つ目ですが、どのような人材を採用したいですか?
洛西:弊社の「プロダクトで世界をよくする!」という理念に共感してくれること。プラス、「自ら組織を作っていく」という思いがあること。この両方がある人にきてもらいたいですね。
都:ありがとうございます。2つ目ですが、採用したい人にメッセージをぜひお願いします。
洛西:Helpfeelがおもしろいのは応用性がある点ですね。セルフサービスという課題の中で自分が顧客に合わせて提案していけるということは、知恵の絞りがいがあり、提案する立場としてはとても楽しいと思います。
都:まさに営業のし甲斐があるプロダクトですね。ありがとうございます!それではまたよろしくお願いします。
洛西:ありがとうございました!
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