【前編】フリマで中古車を売る時代に / カババをリリースした「アラカン」の挑戦

【前編】フリマで中古車を売る時代に / カババをリリースした「アラカン」の挑戦

活性化する中古車市場に「フリマ」が参入

いま、国内の中古車市場は静かな盛り上がりを見せています。去年、*リクルートが行った購入実態調査によると、中古車購入の費用総額は4兆1699億円(推計)となり、2015年の調査開始以来、最大となりました。中古車の購入単価をみても前年より19.5万円増え、155万円となっています。

車を売る人も、買う人も、これだけ高額の売買であれば、少し手間がかかっても安心できるところで行いたいですよね。それを「フリマ」で実現する会社があります。

「カーライフの未来を創造する。」を掲げる株式会社アラカンです。同社は2019年に創業し、自動車専門のフリマサイト「カババ」をリリースしました。

「フリマで中古車を売買する。」その抵抗感にも正面から向き合い、国内の中古車市場で少しずつ広がりを見せています。
カババを知ることで、将来得をするかも?前編ではユーザー視点でカババの魅力を伺いました。

田中一榮
元株式会社ネクステージCOO。入社3年で取締役事業本部長に抜擢される。
就任後、営業部長、人事部長、店舗開発部長を兼任しネクステージ成長の陣頭指揮を執り、同社を東証一部(現プライム)へ上場させる。2019年3月に株式会社アラカンの代表取締役に就任。リアル店舗で出来る事を全てオンラインで実現した自動車流通サービス「カババ」を開発


内丸拓
京都大学工学部、同大学院情報学研究科修了後、General Electric(GE)を経て、経営共創基盤(IGPI)に参画。GEではヘルスケア/ エネルギー/ オイル&ガスの事業部門において経営企画・管理業務に携わり、IGPIではスタートアップから大企業までの幅広いフェーズの企業に対して事業成長/ 新規事業創出/ 事業再生の支援に従事。2022年5月よりZ Venture Capitalに参画

売り手は高く、買い手は安く

内丸
中古車専門のフリマサイトというコンセプトは、とてもおもしろいですよね。まずはカババのサービスの特徴を教えてください。

田中
フリマ形式のメリットは「売り手は高く、買い手は安く」車を手に入れられることです。特徴は3つあります。

【カババの3つの特徴】
・プロの鑑定士が品質を保証
・手間なく出品
・購入者からもらう手数料は3万円(税別)のみ

1つは鑑定結果がついているということです。フリマというと未整備のものが出ているイメージもあるかもしれません。しかし、カババはきちんと整備され、プロの鑑定士が品質保証したものを出品することで、安心してご購入いただけるようにしています。

2つ目は、手間なく出品できることです。フリマに出したいとは思うものの、写真撮影や商品説明の作成、購入希望者とのやりとりが負担に感じられる方は少なくありません。カババは出品作業から名義変更、納車前整備、購入後のクレーム対応までをトータルにサポートします。出品者は出品ボタンを押すだけでご利用いただけるようにしました。

3つ目は公平性があることですね。一般的な中古車販売は利ざやで稼ぐビジネスモデルです。そのため、販売店側からするとできるだけ安く仕入れようというインセンティブが働く。売り手との間に駆け引きが生まれるんですよ。

その点、カババの手数料はご購入者からいただく3万円(税別)のみです。売れ残らないギリギリの価格を設定するためのアドバイスもさせていただきます。

カババはこちらから

ユーザーと販売店はwin-winになれる

内丸
なぜカババを創業したのですか?

田中
私は前職で大手の中古車販売会社でCOO(最高執行責任者)を務めていました。自動車業界は大きなマーケットではありますが、なにしろ競合も多い。日本の人口動態を考えると、今後マーケットが広がることは考えにくいですよね。

であれば、収益構造を変えるしかありません。長年、中古車販売に携わることで私が思っていたのは、「ユーザーにとっていいサービスとはなんだろう?」という素朴な疑問です。

ユーザーから見れば、よいものをできるだけ安く手に入れたい。販売店からすると、価格が下がると利益も少なくなりますから、高く売りたい。ユーザーと販売店の利害は相反するように見えるけれど、本当にそうだろうか。安く売っても儲ける方法はないのか?ということでした。

その際ネックになるのは、在庫、家賃、人件費の3つです。当然ですが、モノの価格にはこうしたものが上乗せされています。それらをカットできれば、ユーザーにとっても、販売店にとってもメリットは大きいと考えました。

内丸
大胆ですね。ここがとても大切なことだと思いますが、車をフリマで買って大丈夫でしょうか?

田中
日本の場合は大丈夫です。
日本で流通している中古車は、世界的にも品質が高いことで知られています。仕入れた車は納車前に点検するわけですが、直すところがないんですよ。前職の経験では9割がそんな感じでした。右から左に流すだけなのに、それだけのコストをかける意味はありませんよね。

私がやりたいのは、気軽にカーライフを楽しめる社会をつくることです。不要なコストをカットする流通を考えていたら、「これってフリマだよね」という結論になりました。コストを抑えて良質な車を流通させることができたら、おもしろいと思いませんか?

サービスリリース後に実感した”壁”

内丸
おもしろいです。ただ、中古車をフリマで買うという行動様式が、まだ市民権を得ていないかもしれません。田中さんは壁を感じていますか?

田中
カババをリリースする前は、手応えがあったんですよ。それで投資家からも評価をいただき、資金調達できたと考えています。

ところが、サービスをリリースして拡大するためにより多くの人に届くメディアで宣伝活動したら、突然コンバージョンが悪くなりました。何が起こったのか、分かりますか?

その段階では、大衆受けしなかったということなんです。「フリマ」と言った瞬間に拒否反応が起こってしまいました。

ただ、カババもリリースして2年。実際に売買した人は、カババのよさを実感されていて、ユーザーの口コミも生まれつつある状態です。15秒のCMでは伝わらないけれど、十分な時間をとれば伝わることもわかりました。これは先日、メディアさんに番組にしていただいたときに実感したことです。

いまの課題は、正しく伝えることですね。できるだけ短いサイクルで、潜在ユーザーの疑問に対する答えを販促動画に入れること、そして実際にカババを通じて車を売買したユーザーの声を届けること。この2つをやりきれば、ある程度の市民権は得られると考えています。

【後編はこちら】

*リクルート「カーセンサー中古車購入実態調査2021」より
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/2021/1125_9715.html