【前編】「遊び」への欲求はなくならない。ピンチをチャンスに変えたアソビューCEOに聞くアフターコロナのニーズとは

【前編】「遊び」への欲求はなくならない。ピンチをチャンスに変えたアソビューCEOに聞くアフターコロナのニーズとは

2020年6月、 Z Venture Capital(以下、ZVC)は「生きるに、遊びを。」をミッションとし、「遊び」が衣食住に並ぶ人生を彩る豊かなものとして、Well-Beingな社会の実現を目指す、アソビュー株式会社(以下、アソビュー)に追加出資いたしました。

2020年6月といえば、コロナ第1波の緊急事態宣言が明けてすぐのタイミングです。なぜこの時期に当社はアソビューへの出資を決めたのか。そしてこのとき、アソビューはどのような状況にあったのか。

同社CEOの山野智久さんに当時を振り返っていただきました。


【山野智久】

明治大学法学部卒。2011年アソビュー(株)創業。レジャー×DXをテーマに、遊びの予約サイト「アソビュー!」、観光・レジャー・文化施設向けバーティカルSaaS「ウラカタシリーズ」を展開。観光庁アドバイザリーボード、経済同友会観光再生戦略委員会副委員長。著書「弱者の戦術」(ダイヤモンド社)

「コロナ案件はちょっと…」100社以上に出資を断られた

インタビュアー

レジャーとアウトドア体験の予約サービスを提供するアソビューにとって、コロナ第一波の2〜5月を振り返って、いかがでしたか?

山野

はい、絶望的な状況でした。当社には2つのピンチがありました。1つは売上の目処がまったく立たなくなったことです。2011年に創業したアソビューにはすでにそれなりの売上があったので、過去の経験を元に売上予測を立て、費用の計画も立てていたわけです。そこに緊急事態宣言がやってきて、お手上げ状態になりました。

もう1つはエクイティファイナンス(新株発行)の道筋が絶たれたことです。コロナ禍前、アソビューはシリーズDの投資ラウンドにいました。対前年成長率180%で、さまざまなVCや投資家からも注目していただいていたんです。しかし、コロナですべて白紙になりました。緊急事態宣言中も100社くらいプレゼンテーションしましたが「コロナ案件はちょっと…」と、箸にも棒にもかからないという状態になってしまいました。

そんな中でZVCから投資決定のご案内をいただいたのは、6月2日のことでした。6月2日というと、緊急事態宣言は明けたものの、飲食店も営業を再開するかを決めてない時期です。まだ社会がどうなっていくのかまったく見通せない時期でした。そんな時期に「チャンスの会社」と、とらえてくださったのはありがたかったですね。

僕がいまこうして元気に話ができているのは、あの時ZVCが投資を決めてくれたからです。ごますりでもなんでもなくて、本当にそれ以上でもそれ以下でもないと思っています。

「お出かけ」は人の根源的なニーズ

インタビュアー

資金調達では、はじめに「やる」と言う人がいるかどうかは、とても重要ですよね。

たしかに、お出かけ自粛が叫ばれていたコロナ禍においてお出かけを誘う、遊びの予約システムの会社へ投資することは、最初は社内でも意見が分かれました。ただ、中国のデータや、日本国内のレジャー施設をYahoo!の混雑マップで見てみると、緊急事態宣言下でも人は「出かけない」という選択肢は取らないことがわかりました。

これは人の根源的なニーズだと思いました。この先、どんな状況になっても人の「出かけたい・遊びたい」というニーズが消えることはないでしょう。そして、密になることを避け、購買行動がオンラインにシフトした後に人は何を思うか。もはや、人は並んでチケットを買わなくなるはずです。

緊急事態宣言中は、旅行業界全体のトレンドとして宿泊サイトのアクセス数もかなり減っていましたが、宣言明けからは徐々に増えていました。社内でもそれらのアクセス数の推移を見て「戻るでしょ?いきましょう」ということで、投資を決めました。

山野

当時の担当が都さんじゃなければ、アソビューは終わっていました。都さんならやってくれるかもしれないと期待していたのですが、本当にやってくれました。

アソビューが展開するto Cとto Bのサービス

インタビュアー

改めて、アソビューが何をしているかをお聞かせいただけますか?

山野

アソビューはtoCとtoBの両方を対象としたサービスを展開しています。toCでは「アソビュー!」という休日の遊びやレジャーの予約サイトと大切な人に体験をプレゼントする体験ギフトの販売サイト「アソビュー!ギフト」を、toBでは観光・レジャー・文化施設向けのDXSaaSである「ウラカタシリーズ」を提供しています。

「ウラカタシリーズ」とは、観光・レジャー・文化施設向けのDXソリューションのことです。「ウラカタシリーズ」は単独で販売するというより、「アソビュー!」の付随サービスという位置づけです。「ウラカタシリーズ」を使ってくださる事業者のほとんどは、「アソビュー!」に掲載していますので。

コロナを境に大きく変わった事業環境

インタビュアー

toCとtoB、両方を向いているから難しい面もあると思います。事業の難しさについてお聞かせください。

山野

toCでいうと、遊びのプラットフォームはまだまだ新しい概念なので、どのタイミングで、何を、どの程度の情報まで提供すれば、予約サイトとしてユーザーに価値を感じてもらえるのかがわかりませんでした。

SaaS(Software as a Service)についても、テクノロジーを使ってレジャーをワンオペレーションで管理する、という商慣習がなかったことが難しかったですね。特に地方に行けばいくほど、「オンラインってなに?DXってなに?」という感じだったので。

こちらがどんなに「生産性が上がりますよ。人が採用できない時代には、従業員一人あたりの労働分配率を上げていくことが大事です」と言っても、まったく刺さりませんでした。やはり、相手が経験したことのないものを言葉で伝えるのは簡単ではありません。

いまもまだ模索中ですが、僕たちもゲスト(エンドユーザーのお客様)と向き合って、そもそも休日をどんなふうに過ごしているのかを徹底的にヒアリングすることにしました。それはもう2年くらい、ほぼ毎週やっています。休日の過ごし方や、お金をかけてお出かけするシーンがどれくらいあるのか、その場合はどこに行っているのか、わざわざ事前予約するメリットは何か。こうしたことに一つずつ取り組んでいくのがひとつのブレークスルーになったと考えています。

toBに関しては、良くも悪くもコロナの影響があります。これまではいくら説明しても門前払いだったところに、突然すべてオンラインで商談しなければならない時代がやってきました。そして「どうやらインターネットって便利らしい」「ツールは便利」という認知が広がったのです。それは追い風となりました。テクノロジーを活用すれば密を避けるための人数制限も簡単にできますよ、という触れ込みも効いています。

インタビュアー

アソビューはこれまできちんとマーケット化されてこなかったニーズをとらえている会社です。僕たちもコロナ後はアソビューのポテンシャルが開花すると信じています。


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